加工廃棄物の利用の現状 |
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1 ものを勝手に捨てられない時代 近年,地球温暖化,異常気象,オゾン層破 壊,ダイオキシン汚染等,地球環境の悪化 が一段と進み,実生活の中でもその影響を 身近に実感することが多くなってきまし た。そこで人類自らこの地球を守ろうと, 国内外で地球環境悪化の主な原因となって いる廃棄物の規制が厳しくなってまいりま した。その結果,産業廃棄物から家庭のゴ ミまで,ものを勝手に捨てられない,自分 のゴミに責任を持たなければならない時代 がやってきました。こういった中で,水産 加工業も例外なくその早急な対応を迫られ ております。そこで,今回はその対策の参 考になればと,加工廃棄物のリサイクルと, 排水対策について少し実例をご紹介したい と思います。 2 近年の加工廃棄物リサイクル事例 (1)全国の実例 @ ホタテガイの産地では,食用である貝柱を取った後のウロ(中腸線のこと。内蔵全 体を指す場合もある。)が残り,現在のと ころその多くが廃棄処分になっていますが,EPA,DHA,エキス等を抽出し,食品や医 薬品などへ利用している事例もあります。 また,貝殻は,食品の栄養強化の目的で 添加される天然カルシウム原料や道路の 舗装材料に利用されています。 A サケは,その頭部からコンドロイチン硫酸を抽出し食品や医薬品に利用したり,珍 味の氷頭なますとして食用に利用されて います。また,中骨は魚醤や骨粉に,白子 は医薬原料に利用されています。 B かつお節加工残滓(頭,内臓,骨)は,魚油,魚粉,フィッシュソリュブル等に加工 され食用及び飼肥料として利用されてお り,魚油からはさらにDHAも抽出,精製 され食品や医薬分野で利用されています。 また,骨はフィッシュカルシウム(食用) として,煮汁は調味料素材として利用され ています。 また,マグロ,サバ等の加工残滓もかつ お節の場合とほぼ同様に利用されています。 |
C かき殻は,肥料,水質改良材として利用。D 寒天抽出残滓は,一部肥料として利用。E 養殖ブリ(ハマチ)フィレー加工残滓は,その頭部を煮物食材として,また,内臓, 中骨等を飼肥料の原料として利用してい ます。さらに,頭部は粉砕処理後,養鶏飼 料として利用されています。 F ボイルイカ加工時に出る内蔵は、飼肥料として利用されています。 G 小鯛のささ漬け加工時に出る内蔵や中 骨も飼肥料に利用されています。 H ベニズワイガニの脚殻は,工業用凝集剤や農業,医療用素材,食品素材と幅広く利 用されつつあるキチン,キトサンに加工さ れ利用されています。また,甲羅はカニグ ラタン用食品容器として,その他の殻は有 機肥料原料として利用されています。 I 練り製品や塩干品の加工残滓は魚粉や 発酵餌料に加工し利用されています。 (2)研究推進事例1) (社)マリノフォーラム21では,平成9年度から,水産資源有効利用システム開発研究会の中で加工廃棄物,未利用資源等の有効利用について様々な研究を行っているので,ここでその数例をご紹介します。 @ 未利用魚類精巣からのDNAの抽出及び有効利用に関する研究。 DNAは,欧米や中国では医薬品として扱われ,国内でも健康食品に使われたり, 各界の研究者が核酸の栄養生理的機能に 注目していることから,ブナ鮭の精巣から DNAを抽出,精製し医薬品,化粧品,健康 食品等へ利用できないか研究を進めてい ます。 A 未利用魚種の酸素分解による機能性食 品等への利用研究 沿岸で漁獲される未利用雑魚の肉質部 分をタンパク質分解酵素で分解し,機能性 食品,動物用・植物用栄養剤としての可能 性を検討しています。 B 魚鱗の有効利用技術の開発 加工工程あるいは漁獲時にはがれ落ち た魚鱗を回収し,異物除去,選別等を行っ |