大中型まき網操業状況から

鹿児島県 水産試験場 漁業部   研究員  板坂 信明


1 はじめに

 アジ・サバ・イワシ類の調査研究と漁況予測を行うなかで,大中型まき網の操業状況
は本県海域の浮魚資源の状態を把握するため大いに参考になると考えています。
 
 

2 大中型まき網漁業の許可と操業

 大中型まき網漁業は大臣許可漁業で,操業区域は本県海域に関係する九州西部海区や
東海黄海海区等10海区に分かれています。現在(H10.1)の許可統数は,大中型まき網
全体で247統,九州西部海区で12統,本県を根拠地とする許可が2統あります。
 過去に遡ると16年前(S57.1)は全体で312統,九州西部で14統,本県が6統あ
りました。本県の許可は経営不振による廃業と根拠地の変更等により減少しています。
 本県海域で操業し,枕崎港や阿久根港に水揚げする船団は,長崎県船等7統があり,
ほぼ周年本県海域で操業する船団は3統です。
 大型船のメリットは,船が大きく時化に強いことはもちろん,網が大きく深場まで達
し,操業区域も広いです。しかし,船・網の維持,船員の確保等経営は厳しいと聞いて
います。
 大型船の入港が多い枕崎港の状況を見ると,昭和54年から平成2年までは年間700
隻前後で推移していましたが,近年300隻前後と少なくなってきており,それに伴い漁
獲量も減少傾向となっています。しかし1隻あたりの漁獲量(CPUE)は漸増傾向にあり,
入港隻数により水揚量が左右されることがわかります。
 さらに詳しく最近の状況をみると,水揚量の多い月にはCPUEも高くなっており,入港
隻数も多くなっています。また,魚種組成を見ると,平成8,9年はサバ類の割合が高
く,10年はアカムロの割合が高くなっています。
 
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3 まとめ

 大型船はある程度の漁獲が見込まれなければ他県海域での操業や休漁する場合があり,
入港隻数は増えません。一方,本県海域に漁場が形成されると入港隻数が増え,水揚げ
量も増加します。以上のように大型船の入港状況から魚種や銘柄,漁場の関係等,浮魚
類の漁況予測の貴重な資料とすることができます。

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