カサゴの種苗生産の現状

 カサゴは沿岸,沖合の岩礁地帯を棲み場としている。一般的に深場のものは体色は赤く,浅場のものは黒褐色で別種かと思うほど体色が異なっています。
 頭が大きく見た目は無骨な魚です。その姿に似ず淡泊な白身は,刺身,唐揚げ,みそ汁と美味しい魚です。
 海産魚類の多くは産卵しますが,カサゴは魚類では珍しい卵胎生,生まれたときすでに仔魚です。交接器を持ち
10,11月頃に交尾します。卵巣内で受精した卵は腹の中でふ化し1月たらずで全長4o程度に成長して生まれてきます。産仔期は12月から3月頃で,雌1尾が1万から5万尾の仔魚を産みます。
 また,満
1年で成熟して再生産に加わり繁殖力の強い魚と考えられます。
 文献をひもとくとカサゴの種苗生産は以外と古い歴史があります。国の事業で放流技術の基礎研究が昭和
46年から4年間実施されています。(鹿児島県を含めて5県)。本県でも,その中で種苗生産試験を試みていますが,量産化には至らなかったようです。
 その後,
20年間ほど本県では生産が行われていません。平成4年度から本格的にカサゴ種苗生産に取り組んで7年目になりました。
 カサゴの種苗生産を簡単に紹介します。産仔の始まる
12月から産仔状況を観察します。
 産仔魚が多くなる頃を予想して,生産を開始します。その時期は
1月中旬から2月上旬になります。産仔の方法はプラスチック製の篭(29×39×56p)に腹の良く膨らんだ雌親魚を5尾位ずつ入れて,篭6個を飼育水槽に垂下して産仔させます。雌親魚は30尾程度です。それから毎日夜の8時に2名で産仔魚の係数を行い,その数が50万尾に達したら親魚を取り上げます。産仔期間が長いと成長の差が大きくなり共食いが起こりやすくなるので,この間は早く50万尾になるように祈るような毎日です。基本的には5日を産仔期間としています。
 仔魚として生まれ,すでにエサを食べますので,飼育水槽に最初からワムシを添加します。これは卵から生産する魚類に無い特徴です。全長14o位から配合飼料を与えます。アルテミアは省力化のため当センターでは基本的には与えていません。
 最初は浮遊生活をおくり全長
20o程度で着底生活にはいります。
 カサゴは全長
17o位から共食いの性格が激しくなります。高密度で飼育すると小型群が追われて大量へい死する事があります。例を挙げますと,平成9年は特に大小の差が極端で,大型群(全長33o)2千尾によって小型群(全長22o)が10日の短期間で17万尾もの大量へい死をまねき生産を中止したこともあります。
 カサゴ量産の大きなポイントは共食い防止ですが,そのためには大小の選別分槽が欠かせない作業となります。しかし当センターでは同時期に複数の魚種の生産時期が重なり水槽が不足して思うように選別分槽ができないのが現状です。
 カサゴは大きな回遊移動行わず,回遊性が小さい魚種として放流要望が年々多くなっています。平成
10年度で20万尾の要望で,うち養殖種苗として6万尾の要望が出てきています。 当センターの種苗で平成8年から養殖している業者がいますが,成長の早い物は1.5年で出荷でき,天然物と比較して短躯で肉が多く好評とのこと,養殖魚種としても有望と考えられます。
 今までの生産量は最高約
12万尾ですので,水槽の不足する中でこの要望をまかなえる飼育方法を考えてみたいと思っています。ひとつの考え方として,カサゴは着底と物に寄りつく習性があるので,中層を有効利用するために水槽に引き上げ可能な中層板を水平に垂下すれば,共食いの防止ができるのではと検討しています。  (栽培センター 平原)

目次へ