来たる持続的養殖生産確保法に向けて |
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魚病被害・水産用医薬品使用状況調査(水産振興課)によると,内水面関係の平成10年の本県の養殖魚病被害額は推計で1億2千万円で,アンケートの回収率約40%から単純計算すると,この約2.5倍の被害額が出ている計算になります。 ここ30年,急速に養殖業が発展したもの の,近年は魚病の多様化が進み,養殖場で疾病が発生してもお手上げのものもあります。昭和50年代から,薬事法で各魚種毎に随時「要指示薬」が決められたが,最近は薬剤に対する耐病性の問題と,水産物への残留が公衆衛生上の問題として提起され,薬事法見直しの必要性が言われています。また,魚種によっては業者が種苗を輸入している事業所もあり、国外の疾病の移入についても憂慮され始めています。 このような情勢から,水産庁栽培養殖課魚類防疫室では,持続的養殖生産確保法の11月への法律施行に向けて作業を進めているところですが、それに伴い特定疾病等対策要綱も新たに示されます。 要項ではでは各疾病ごとに(1)特定疾病,(2)その他の新疾病(3)定着している疾病に区分され,それぞれの対応について明記されます。特に,特定疾病の場合は,国内の水産業に多大な影響を及ぼす恐れがある疾病として現在のところ別表の疾病が指定される予定です。また農林水産省や都道府県の対応,魚類防疫員(水産試験場職員)や魚類防疫協力員の設置とその役割,水産試験場等を中心とした防疫対策班の設置とその任務,診断における大学等との協力体制,細部にわたる準備事項,水産庁への報告様式,公表の方法などが明記されます。 |
表 特定疾病に指定される疾病
近年の養殖業においては,抗菌剤で対処できないウイルス性疾病や耐性菌による魚病被害が増加しています。抗菌剤等に頼らない治療が一番望ましいが,現実にはそうはいかないので,そもそも魚にある防御能を高め,常に健康な状態を保つことも重要です。そのためには過密繁殖の回避,適正給餌,水質管理,器材の消毒の徹底などが必要と思われます。 しかし内水面養殖業では敷地面積の問題があり過密養殖になりがちなこと,さらには魚価の低迷などの様々な要因があり,経営的に厳しい状況が続いています。 魚病については今後も更に多様化が進むと考えられ,しかも持続的養殖生産確保法が施行されると魚病担当者に求められることが多くなると予想されるので,今後も養殖業者に役立てるような疾病の治療対策と発生予防に取組みたいと思います。 (指宿内水面分場 立石) |