認されました。
この他にも基盤設置場所を変えるなど様々
な工夫を試みましたが,音響自動給餌器付き
飼付け基盤を利用した調査では,残念ながら
前回中野(うしお第261号,平成6年7月)が
紹介したように,なかなか期待したような良
好な結果が得られませんでした。


港内飼付け調査

本県とともに同事業に取り組んでいる東京大学海洋研究所及び日本栽培漁業協会による

研究では,
@10-4 1x (半月時海面直上における照度)
より暗くなると全長60oのシマアジは成
群行動ができなくなること
A10-3 1x より暗くなると寄りつき行動(物
に寄りつく行動)ができなくなること
B空腹となる時間が1週間以上続くと群が
分散する傾向にあること
C給餌の停止によって日毎にホームレンジ
(行動圏,行動範囲)が広がったこと
D物陰に寄りつく性質があること
等が既に明らかにされています。これらの知
見から判断すると,現地においては
@港内には電灯が灯っており,夜間でも暗
闇にはならないこと
A水揚げ時のこぼれ餌が餌切れを防ぐこと
ができること
B時化が続いても給餌ができること
C港内に停泊中の船舶の存在が日陰を作ること

等から,港内はシマアジを停留させるのに都
合の良い条件を備えていると考えられます。
そこで,平成8〜10年度の3カ年の調査では,
上記の試験と並行して,「港内飼付け」試験を
行いました。「港内飼付け」とは,漁港内にシ
マアジを放流して一定期間餌を与え,その後
次第に分散させるというものです。調査は古
仁屋漁港内で行いました。
調査の結果,港内飼付け群は長期間滞留を

 

続けましたが(6〜8ヶ月),放流後約1ヶ月の
間に約3/4が減耗しました(図4・5)。 減耗
の要因は遊漁者による釣獲,外敵魚による食
害,港外への逸散等が考えられますが,遊魚
者による釣獲が最も多いと考えられます。

今後の課題と展望
今後港内飼付けを実用化するためには,減
耗の主要因と考えられる遊漁者による漁獲を
なくすよう,広報等をよりいっそう強化する
必要があります。マダイでは広島,宮崎,愛
媛等多くの県で取り組まれており,いずれも
遊漁者対策に頭を悩ませているよです。
しかし,港内飼付けには以下のような優れ
た点があります。
1許可等持たなくても始められる。
2飼付け基盤を設置する必要がない。
3給餌のための経費・時間がかからない。
4放流の効果を直接目で確認できる。
5漁業関係者のみならず一般市民も効果
を体感することができる。
将来的には上記のような課題を克服してど
んな港でも放流が行われ,市民に親しまれな
がら魚が大きく育って漁獲に結びつく日が来
ることを祈ってます。(漁業部宍道)