アサリ貝等二枚貝の毒化現象について

 春になり海水温の上昇とともに担当者が危
機感を募らせるものの一つにアサリ等二枚貝
の毒化があります。
 本県で初めて貝の毒化が確認されたのは,
昭和62年6月で山川湾産のアサリを食べた方
が中毒症状を示しました。
 そのため,約1ヶ月間アサリ貝の採捕及び
出荷の自主規制措置がなされました。
これは,国の通達に基づきアサリ貝等のム
キ身部分(可食部)1gについて,どれだけの
毒の量があるかを調べ,高い値となった時に
取られる措置であり,現在,公定法となって
いるのは,20g換算のハツカネズミを用いる
方法でこの1匹を15分間で殺す毒の量を
1MU(マウスウニットという単位)と呼び,
この値が4MU以上になると,さきに述べた
規制措置がとられることになります。
 ところで,この貝毒は麻痺性の神経毒であ
り,これを人が多量に摂取することで中毒症
状を示し,重症の場合には呼吸困難,ひいて
は死に至ると言われています。ただ,この値
は2,000から30,000MUとされ,高濃度の毒
力と相当量の摂取が前提となります。
 当水産試験場では,貝毒発生以来,これま
で年間13〜18回の貝毒検査を行ってきまし
たが,平成4年及び8年に規制値である4MU
/gの麻痺性貝毒が検出されたため,アサリ
の採捕・出荷の自主規制措置がとられました。

アサリ貝等二枚貝毒化のしくみ
 
アサリ貝等二枚貝の毒化は,貝自身が毒を
作り出すのではなく,二枚貝の餌となってい
るプランクトンに起因しています。
 アサリの毒化時期に決まって現れるプラン
クトンがアレキサンドリウム・カテネラと呼
ばれるものです。図1にこれまで行ってきた
アレキサンドリウム・カテネラの細胞数とア
サリ貝の麻痺性毒力の調査結果を示しました。
プランクトンの生息数と貝の毒量のピークが
ほぼ一致しており,プランクトン数が多いほ
ど貝の毒値が高くなる傾向があります。

今後の課題
 この種のプランクトンは日本各地の沿岸で
見つかっており,それに伴い貝の毒化も全国
至るところで発生しています。
 山川湾においても貝毒調査の際には,当該
プランクトンの個体数を調べ,急激な増加が
認められた場合には,アサリの毒化を想定し
て検査体制を強め,規制値以上の毒化に備え
ています。
 しかしながら,当該プランクトンについて
は種特異性,環境条件等について不明な点が
多く,今のところプランクトンの消長を完全
に予測することが困難です。
 そのため,今後とも調査を継続し,中毒の
未然防止及び安全で安定した水産物の供給に
役立てたいと思います。(生物部稲盛)