低コストの餌ってどんな餌?


 養魚用飼料原料として重要なマイワシ資源の全国的な減少は,魚粉の高騰,供給不足を招き,養殖業経営の支出の半分程度を占めるのが飼料代であることから,養殖業者経営に大きな影響を及ぼすようになってきました。
  そこで当場では,平成8年から,魚粉の代替として鰹節等の製造過程で生じるカツオ加工残滓(荒粕)に注目し,その飼料化試験を行い,海産魚用配合飼料の代替蛋白源に関する研究の一環としてハマチを供試魚に実証化試験を行い,カツオ荒粕の有効性を確認してきました。
  また,近年では,魚粉高騰に加え,魚価の低迷や漁場環境の変化等,問題が複雑化し養殖業者にとって死活問題となっており,安価で安定的に確保できる魚粉代替源の探索や魚類養殖業における効率的給餌技術の確立の重要性はますます増すばかりです。
  このような現状を踏まえて,本県で大量に産出する焼酎粕,畜産系廃棄物より精製される肉骨粉及び血粉等,より安価で従来魚粉と同等以上の成長が得られる魚粉代替物質を探索するために,平成11年度から「低コスト型配合飼料開発試験」という事業がスタートしました。平成11年度は肉骨粉に焦点を当て,マダイを供試魚に飼育試験を行い,その効果を研究しています。
  本稿では,肉骨粉の飼育試験の中間報告とともに,体コストの餌について考えてみたいと思います。
 図−1に,平成11年秋から冬に実施した肉骨粉の飼育試験結果を示します。一目で肉骨粉の添加量が増えるに従い,成長が劣ることがわかると思います。しかし,各種効率は遜色なく,摂餌が悪いため,それが影響し成長差となって現れてしまいました。
  この試験は,第1回目の摂餌するかどうかを試験したものであるため,肉骨粉そのまま加え,摂餌誘因物質等を添加していないので,このような極端な結果があらわれたと考えています。

  というのも肉骨粉は,その名のとおり,畜産動物の内臓や,皮,骨などを粉末化したもので,粉剤してあっても粒子が粗く,加えて,低コストということでタンパク質の添加物量を低く押さえたため,結果としてタンパク質源を占める肉骨粉の割合が大きくなったこと等が,原因ではないかと考えています。

 その後,2回目の飼育試験を実施し,その結果を現在とりまとめている最中ですが,2回目は肉骨粉を更に砕粉化し,摂餌誘因物質としてカツオのソリュブルを加え,タンパク質の添加量も増やして試験を行ったところ,成長はかなり改善されました。
  低コストにするためには,価格の高い魚粉や魚油の添加量を低く押さえることが必要ですが,成長が劣ると誰も使用しないでしょう。しかし,実際に試験してみると,魚は選り好みがあり,なかなか魚粉以外のものを好んで食べてくれないように感じています。しかし,食べてくれたら,成長することが確認できたので,いかに食べさせるかが今後の課題といえるでしょう。成長を落とさずに,どの程度補えるか,今後さらに研究していきたいと思います。
(化学部 山下)
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