港内飼付け放流のすすめ

はじめに
本県ではシマアジを対象とした飼付け型栽
培漁業の実用化に向けての調査を行ってきま
した。調査期間は県単独事業として開始され
た昭和63年度から平成10年度までの11年間
でした。
飼付け型栽培漁業とは,魚を放流する際,
ただ放流するのではなく,しばらくのあいだ
放流場所で餌を与えながら魚を留まらせ,次
第に自然に慣れさせ分散させるという放流手
法です。これによって放流直後の減耗を減ら
そうというのが飼付けのねらいです。
ここでは平成6〜10年度の調査により得ら
れた成果について紹介したいと思います。

調査海域

調査海域は奄美大島の南西部に位置する瀬
戸内町です(図1)。加計呂麻島と奄美大島に
挟まれた大島海峡が試験の舞台です。



飼付け放流調査

調査方法はまず図2のような生け簀網にシ
マアジ人工種苗を収容し,中間育成して標識
装着後放流するというものです。生け簀には
中央に音を鳴らしながら四方に餌を撒くとい
う「音響馴致装置付き自動給餌器」を備えて

います。中間育成中に音を鳴らしながら餌を
撒くことによってシマアジに音を学習させ,
放流後も音を聞かせればシマアジが集まって
くるようにします。網を取り除いた後も生け
簀を飼付け基盤としてそのまま置いておきま
す。

調査海域は毎年台風が頻繁に来襲するた
め,中間育成生け簀(飼付け基盤)は波の穏
やかな内湾に設置しなければなりません。そ
こで生け簀は久慈湾に設置しました。しかし
水温上昇期になると,潮流が緩やかであるが
ゆえに疫病等による大量斃死が発生し,関係
者を落胆させました。
中間育成場を潮流の速い須手沖等にも設け
て薄飼いとし,活力の良好な放流種苗を仕立
てることもできました(図3)が,その後久慈
湾に搬入すると途端に活力が低下しました。

また同海域にはイルカ・サメ・大型ヒラアアジ
類等の外敵が多く,無事放流できたシマアジ
もこれらによって食害を受けている様子が確
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